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大沼の湖底の泥から地域環境・地球環境変動を読み解く

  大沼、小沼、蓴菜沼(ジュンサイヌマ)と2~3の小池沼(ショウチショウ)から成る大沼湖沼群(オオヌマコショウグン)は、寛永17年(1640年)の駒ヶ岳大噴火による噴出物(フンシュツブツ)や、山が崩れたために生産された大量の土砂によって、山麓(サンロク)の川がせき止められてできました。
 
PDF昭和4年6月18日噴火の写真 (230.6KB)
PDF昭和4年6月18日噴火の写真 (225.3KB)
《噴火の参考 昭和4年(1929年)6月18日噴火の状況》

 1640年以降も周囲の川から流れ込んだ土砂などが現在まで湖底に堆積しており、また発生年代について文書で記録が残っているその後の大噴火で降った火山灰も、その湖底の堆積物に挟まれて残っているという特徴があります。
 つまり大沼の湖底堆積物は、下から上へ(過去から現在まで)積み重ねられたものですから、これまでの多様な出来事が記録されている記録紙であると言うことができます。
 したがって、その堆積物を調べることにより、駒ヶ岳の火山活動や気候変動を解明でき、近年の豪雨や畑地・牧草地の土砂が流入した痕跡も知ることができます。
 
PDF大沼最深部の湖底堆積物試料の画像 (487.2KB)
《大沼最深部の湖底堆積物試料》

 去る平成29年(2017年)10月28日に大沼国際セミナーハウスにて、大沼湖底堆積物等から火山活動や地球環境の変化を探る公開シンポジウムが、地形学や地質学、工学などの研究者でつくる「日本地形学連合」(事務局:京都大学防災研究所内)をはじめ金沢大学環日本海域環境研究センター、北海道教育大学函館校、北海道大学(水産科学研究院・農学研究院)、七飯町、森町、鹿部町、北海道渡島総合振興局の共催並びに北海道新聞函館支社の後援により開催されました。
 
シンポジウムの開催風景の写真
シンポジウムの開催風景の写真
シンポジウムの開催風景

 その内容(論文)が本年1月に学会誌「地形」(第40巻第1号)にまとめられたほか、日本地形学連合のホームページに、一般社会人や中高生等を対象とした論文解説と一緒に掲載されていますので、興味のある方は是非ご覧ください。
日本地形学連合のホームページへ

一般社団法人 日本地形学連合からのメッセージ


「大沼・駒ヶ岳のこと」
 柏谷 健二
 (一般社団法人 日本地形学連合理事/金沢大学環日本海域環境研究センター名誉教授)

 亀田郡亀田村(現函館市)で生まれ育った私の小学生時代の思い出(楽しみ)の一つは秋の大沼遠足でした。遠足では景色を写生することが課題とされていましたが、汽車(当時は蒸気機関車が牽引)に乗って五稜郭駅から大沼駅(現大沼公園駅)へ小旅行できるのが何よりの楽しみでした。函館市内の小中学生の大沼・駒ヶ岳への遠足は現在も続いているようですが、遠足の楽しみ方も変わってきていることと思います。写生も遠足の課題として続いているのでしょうか。
 
PDF蒸気機関車のモノクロ写真 (185.1KB)
PDF線路と牛のモノクロ写真 (172.3KB)
PDF蒸気機関車の写真 (157.3KB)

 さて、ここではもう一つの大沼・駒ヶ岳の楽しみ方(魅力)を紹介しましょう。

 湖底堆積物は地球規模の環境変動を記録しているばかりではなく、地域の環境変動も詳細に記録しています。大沼の湖底堆積物には現在の大沼湖沼群が形成された1640年以来の環境変動(自然および人為)の記録が残されており、地域の成立ちを知る貴重な資料となっています。文書記録が限られている明治以前の記録が湖底堆積物に残されていることは、地域の歴史を辿る上でも重要です。
 また、大沼の堆積物には現在までの環境変動も記録されているのですから、明治以降の自然変動及び人為的変動も知ることができ、過去150年の環境変動も推定できるのです。

 日本地形学連合のホームページでは、以上の内容を中心とした最近の大沼・駒ヶ岳等に関する知見が、論文とその解説文として掲載されていますので、地域の成立ちを知る環境史として読んで頂ければと考えています。

 地域の成立ちを考えるということは、地域をそして地球を考えることに繋がりますので、記録庫としての大沼にも着目し、その情報を教育や防災・観光等にも活用して頂ければ、大沼・駒ヶ岳を研究対象とした一地球科学者としても大きな喜びです。 
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お問い合わせ

環境生活課自然環境係

電話:0138-67-5855

FAX:0138-67-5856

Eメール:321-shizen-k@town.nanae.hokkaido.jp

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